【レポート】「データ・ドリブンなゲーム運営について迫る~ビッグデータの分析がもたらすゲームビジネスの成長~」をレポート

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SHIFTは、12月7日、「データ・ドリブンなゲーム運営について迫る~ビッグデータの分析がもたらすゲームビジネスの成長~」と題したセミナーを開催した。

登壇者は、シンキングデータ株式会社(以下、シンキングデータ)データアナリストの白石陸氏、株式会社リーン・ニシカタ代表取締役の西方智晃氏、株式会社1LDK代表取締役CEOの朝岡優太氏。

本イベントでは、ゲーム業界におけるデータ分析の重要性や、どのようにして分析を行なっているのかについてディスカッションが行われた。

また、シンキングデータが提供しているゲームに特化したデータ分析プラットフォームの分析画面を実際に活用するデモンストレーションも行われた。本稿ではその模様をレポートしていく。

なぜ今データドリブンが重要か?

 

シンキングデータ株式会社
Data Analyst
白石 陸 氏

2015年、弱冠18歳にして国際協力業界で活動をはじめる。2016年から、国際NGO日本リザルツにて国際保健に関する政策提言活動、及び東アフリカ・ケニアにて「スナノミ症対策プロジェクト」を企画立案・運営に邁進。2019年まで国際協力機構にて日本企業の海外展開を支援。2020年に株式会社メタップスにジョイン。2021年3月から株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所主任研究員に就任。現在、シンキングデータ株式会社でデータアナリストとしてゲームアプリのデータ分析、さらにデータ・ドリブンな運営を支援。

 

株式会社リーン・ニシカタ
代表取締役
西方 智晃 氏

株式会社ディー・エヌ・エー在籍中、分析基盤構築、大規模データ集計、機械学習などの分析業務を手がける。2018年に株式会社リーン・ニシカタを創業し、今は分析×マーケティングを活かしたモバイルアプリへのグロースハック支援を行う。

 

株式会社1LDK
代表取締役CEO
朝岡 優太 氏

2015年新卒でアカツキに入社。複数本のIPタイトルの新規開発/運用・BizDev業務に従事。2020年1LDK設立。同社代表取締役CEO。複数のゲーム企業・事業会社のビジネス支援、ライブエンターテイン。メント事業を統括

 

まず初めに、3人からは”なぜ今データドリブンが重要か”について語られた。

白石氏は大きく二つの要素が今の時代にはあると話す。一つは顧客層が見えづらくなっている点を挙げた。今の時代はインターネットやSNSの普及もあり、多くのサービスが世界中どこからでも楽しむことができる。それゆえに、多種多様なユーザー層がいる為、自分たちのサービスにおける顧客層が分かりづらくなっている状態になっているそうだ。

何か活動を行う際は、誰に向けて行うかが重要であるが、その提供すべきユーザーの特定が困難になっている現状があり、データドリブンはその見るべきユーザーを探し出すために必要だというそうだ。

二つ目に、組織運営が潤滑になるという点が挙げられた。これまでは経営層や幹部層が意思決定する際に、勘を頼りにしている点はあったが、組織が拡大していくにつれ、他のメンバーにも納得してもらう必要も出てくる。多くの人を動かすには主観や熱意だけでなく、説得性のある材料も意思決定には必要となり、そこでもデータドリブンは重要になってくるのだ。

一つ目に比べると守りの分析と言えるようだが、これも事業活動の中では重要になると説いた。

西方氏もこれまで多くのゲームタイトルを分析してきた中で、同じく重要性が年々増えているという印象を持っていた。

同じタイトルであってもユーザーさんによって遊び方が異なることが多く、その中で課題を抽出すること自体が困難になっており、感覚だけだと難しい。

この傾向は2018年ごろから見られてきたそうであり、開発規模の拡大と共にデータ分析を導入してくる企業は増えてきた印象だと話す。

二つの目のメリットとしては、白石氏と同じく、考え方を取りまとめて意思決定する際に役に立つことを挙げた。

ゲームクリエイターであれば、皆良いゲームを作りたいという気持ちは一緒である。ただ、多くの人間が関わってくると意見が分かれることもある。どの意見も”良いゲームを作るため”になるのだが、どうすべきか。

そこで、データによって優先度をつけることによりスムーズに意思決定を行えるようになるという。多様な開発形態が増えてきた中で、組織内の調整も一苦労になることが多い。そこでデータを活用することでも、よりクリエイティブなことに時間を確保することができるようになると話した。

ツールを活用してデータアナリストが本来すべき分析を

データドリブンの重要性について語られた後に、ではどのようにして分析していくかに話題は移っていった。

朝岡氏からまず第一歩として、スマートフォンゲームでは他のエンタメやサービスとも時間の奪い合いがあるので、継続率を重要視している企業も多いが、その中で自社のゲームに愛着のあるユーザーはどのようにして特定するのかという質問が投げかけられた。

西方氏からは、ユーザーごとに何回バトルを行なっており、何回感情の起伏があったのか、などを見ていくことが多いと話す。感情の起伏などはデータで分析することができる。例えば、バトルの勝率によってユーザーがとっている行動などみていくそうだ。

ここで、重要なのが、運営側であるゲーム会社が”どのようにゲームを楽しんでもらいたいか””どのように楽しんでもらっているのか”をしっかりと把握しておくべきことが大事だと言う。

分析した結果、ユーザーのUXフローが運営として想定していたものなのかどうかを見比べていくことで愛着のあるユーザーや本来考えるべきユーザーがみえてくるそうだ。こういったものは分析してこそわかるものだと西方氏は話す。

データアナリストはそのような分析をSQLを書くなり、計算などを行なって分析を進めていくことになるのだが、そのサポートを行えるのが「Thinking Engine」となる。ここで実際に、デモ画面にても紹介された。

ここで、ThinkingDataが提供するデータ分析ツール「ThinkingEngine」の特徴も紹介された。

「ThinkingEngine」はシンキングデータ社が提供するデータ分析ツール。そのサービスの設計思想として、「誰でもデータを扱える」「誰でも高度な分析手法が使える」を挙げ、その利便性や考えに反響もあり、現在では800社以上のゲーム企業がこのツールを使っているという。

▲誰でも分析できる分析ツールとして、どの分野の分析をノーコードで行うことが可能だ。

デモ画面では、DAUや売上推移の抽出などが実演された。ここから、例えばDAUが下がった際に、離脱したユーザーの行動ログを一覧で表示することもできる。

そのユーザーの行動傾向にて、どの場面で離脱することが多いのかを分析していけるそうだ。行動データも「Thinking Engine」では一瞬で表示することができ、白石氏からは数秒でデータを出すことが可能と話していた。

実際に、このようなデータをどのように活用していくのかは、指標とするものをどのようにみていくかだと話す西方氏。

まずはARPPUやDAUなど、売上を構成する要素を因数分解していくことが第一歩になり、そこから人による要素だとなった場合、継続率を見ていくことになる。

▲「ThinkingEngine」のデモ画面。西方氏が話している中でもサクサクデータを抽出していた。データもすぐ抽出でき、触っていても楽しくなるプロダクトであることも意識しているそうだ。

継続率ではリテンションの分析をしていくことになるが、「Thinking Engine」様々な切り口でデータを抽出することが可能だそうだ。

例えば、“直近30日間はログインがないが、今日ログインしたユーザー”といった様々な継続率を分析することもできる。

これを用いれば、例えば大型プロモーションを行った当日にどのくらい復帰したかもすぐに把握することができそうだ。

課金についても、初心者パックなどの商品群によっても分析することもできる。課金率においても、どのレベルのユーザーやどういった商品が購入されているかも抽出できるので、初心者パック購入後にどのようにして別の商品も課金して行っているのかも把握することが可能だ。

他にも、課金率が下がった場合、商材に対してどのくらいのユーザーが購入しているのかをみていくのだが、西方氏はユーザーの課金額に応じたセグメントを設定して分析していく。

そのセグメントごとのデータによって、適正価格だったのかどうかなどを分析・調整していくそうだ。

このセグメント設計が奥深い要素になっていると西方氏は話し、ゲーム毎でも異なってくるので、その匙加減が肝となってくるそうだ。

例えば、前月課金した人が一つのデッキでゲームを楽しめているようであれば、そのユーザーの需要を満たしていることになるので、新しいキャラクターや強化素材を課金アイテムとして用意しても購入しないようになる。この点は、過去の購入履歴とデッキ編成を何回行ったかを見ていくことで分析することでできる。

朝岡氏からは、課金率や継続率、需要と供給を分析しても、売り上げが戻らないことは往々にしてあり、その時は話題性や外的要因も考えるが、分析ではどこまで考慮しているかという質問も投げられた。

西方氏からは、分析に落とし込むのは難しい部分ではあるが、例えば、新キャラクターが出た場合でも外部のSNSなどの反響をみていくことも大事だと話した。

白石氏からは、フワッとした抽象的な事象をデータで落とし込むのがデータアナリストの役割だとし、本来データアナリストがやるべきことは仮説を立てることだと話す。

そのためには、ゲームへの理解とデータ分析の知見のほか、話題性などの世の中の動きも把握しておく必要がある。

ただ、そういった本来やるべきことに時間が避けておらず、SQLを書くことなど、作業に忙殺されているのが、データアナリスト全般に抱える課題となっているそうだ。

そう言った部分は「Thinking Engine」を活用して、誰でもデータを抽出・計算ができるようにして、データアナリストは仮説を立てるなどの本来のやるべきことに時間を掛けてほしいと思いを話した。

西方氏からみても、目の前の出来事を分析することで、手一杯になっているデータアナリストは多いそうだ。事業として運営している以上、目の前のことももちろん大事だが、中長期的な分析と仮説を立てることも、企業にとってもユーザーにとっても多大に貢献できることなので、今後は中長期的な取り組みもしていくべきとも話していた。

▲何か起きた後に、分析検証しては後手になるので、なるべく開発時から分析できる下地をつくることも大切になるそうだ。

セミナーでは質疑応答も随時行われ、データを用いて分析する際に担当者によっては恣意的にデータを出されることもある。そのような場合などはどのようにして対応しているかといった質問も投げられていた。

この質問に、西方氏は、”どこまで主観を持つのか”と”数字を突き詰める”のバランス感覚は大事だと話す。理詰めだけでも面白みのない作品が生まれてしまう。そこで、西方氏は何に対して施策を行ったのかを明確にするのが重要だと話す。

例えば、”復帰ユーザーの定着”であれば、新規ユーザーをデータ分析の分母から除外することが大事であり、実現したいことを改めて立ち返り、バイアスをかけないようにすることが大事だと話した。

最後に、分析や仮説そのものに時間を作れるようになることはデータアナリスト全体がより良い環境になるので、「Thinking Engine」のようなサービスでより一層データアナリストが活躍する場が増えてほしいと西方氏は語り、白石氏からは皆様の分析業務を役に立てるツールになるので、気になる人はデモ版なども提供しているのでお気軽にご連絡いただきたいとしてセミナーは幕を閉じた。

   

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